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したたか

したたか

 したたかとは、「転んでしたたか頭を打った」のように「強く」の意味で、また「したたかなヤツ」のように「強く手強い」といった人物評価に用いられる語。漢字では「強か」と書くようだが、こう書かれて「したたか」と読める人は少ない(筆者も前後の文章からの憶測でどうにか読めるレベル)。しばらく前には「健か」とも書いていたようで、漢和辞典を「したたか」で引くと両漢字が表記されているが、いまやワープロで変換させようとしても「健か」のほうは出てこない。つまり「強か」も「健か」も当て字であり、読めなくてもいいレベルの漢字である(自分が読めないからって、ちょっと言い過ぎでは)。

「したたか」は、手紙などを書くという意味の「したためる」と、まさかの同根だという。「したたか」は、もとは手抜かりがなく堅実であるという意味で使われ、そこから、きっちりと固い、壮健で強いなどの意味が派生した模様。

「したためる」のほうも、もとは手抜かりなく準備する、しかるべく処理するという意味で、そこから字を書く、食事をするなどの意味が派生した。つまり、どちらも「抜かりなく堅実」という点で一致しているわけで、そうなると「したた」という語幹の起源が気になる。記紀歌謡に使われている「したたに」という古語があるが、これは「下下に」から来ているのではないかと推測され、「ひそかに」「隠れて」という意味である。両者が関係あるとすれば、ひそかにという意味の「したたに」からの、堅実であるという意味の「したため」「したたか」への変化がよくわからないが、研究者の中には、完全犯罪ののような内密な計画は堅実に進めるものだからだなどというスパイ映画的な説をとなえる者もある。

(KAGAMI & Co.)

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