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はした金、端た金
はしたがね
はした金(端た金)とは、わずかな金銭。「こんなはした金は、私なら明日にでもすぐ用意できますよ」のように使う。その人の財力や金銭感覚によって「はした金」の額は変わってくるが、一般的には1700万ドル(約26億円)くらいではないかと考えられる……というのはまあ冗談にしても、冒頭の例文にみられるように「はした金」は、自身の財力に対して比較的高価な金額を「少額である」と言うことによって、自身の財力を大きく見せかける、つまり見栄を張るための小道具として使用される言葉といえる。というわけで定義しなおすと、はした金とは、自身の「想定財産」に対するわずかな金銭のことである(「想定財産」を基準としているので、26億円を「はした金」と言っても、使い方としては間違いではない……間違っているのは、あなたの精神構造だ)。
「はした金」の「はし」は、物の中央や中心に対する周縁、端部を意味する「端(はし)」だと考えがちで、漢字も「端た」とあてているが、古代「端」の「はし」と「はした」の「はし」ではアクセントの置き所が違い、別語源となるようだ。「はした」の「はし」と共通したアクセントを持つ言葉に「はしは(圭)」という古語があり、これは先端が鋭角三角形状に尖っていること、その先端をいう。「はし」が尖っているものという意味で、後の「は」は「端(はし)」であり、「はしは」は尖っている先っぽという意味となる。「はし」にわざわざ「端」を足しているくらいだから、「はし」と「端」は別物。したがって「端た」は当て字となる。「はした」の「はし」も「はしは」と同源と考えられる。「た」はよくわからないが、「行く手」などの「手」が「手綱(たづな)」のように「た」に変化した語(大野晋説)、「所」の「と」が変化した語、「沖つ白波(沖の白波という意味)」のように、体言に続く「の」の意味の「つ」が「た」に変化して「はした」となり名詞化したもの、などがある。
日本では、円形や正方形など整った形に対して、三角形や先端の尖った形は整っていないもの、不足しているもの、不快な形として嫌われた。そこから「はし」は、不足していること、中途半端なこと、不快な状態などの意味で使われるようになったのだという。「はした者(召使い)」「はしたない(非常に不快である)」なども、中途半端な、不快なという意味がもとになっている。そこから「はした金」も、不足している金、中途半端な金という意味で使われていると考えられるわけだ。
(VP KAGAMI)