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ややこしい、ややっこしい

ややこしい、ややっこしい

 ややこしい(ややっこしい)とは、複雑である、込み入っていてわずらわしいという意味。つまり、めんどくさいヤツの発言、登場人物の名前も覚えられないミステリー、上司に押しつけられた仕事などの様相を言う。

『大言海』によると、「ややこしい(ややこし)」は赤ん坊を意味する「ややこ(稚児)」に、形容詞を作る接尾語「しい(し)」を付けたもので、「おとなしい(大人しい)」の対語だという。「おとなしい」は、いまでは物静かであるという意味で使われ、昔は文字通り大人らしい、大人っぽいという意味だったので、「ややこしい」が対語ならば、現在ではやかましい、昔なら子どもっぽいという意味になりそうだ。しかし、『大言海』は「細かい」「こまかくて煩雑である」という意味だとしており、赤ん坊みたいに小さいという点に着目している。つまり、小さい→細かい→こみいっている→こみいっていてわずらわしい、という意味の変遷を経たものということだ。しかし「ややこしい」に『大言海』の言う「小さい」や「細かい」という使用例が見当たらないので疑問が残る、それならば、「おとなしい」の対語として、やかましい、うるさくてわずらわしいという意味で使われ、それが複雑でわずらわしいという意味を表すようになったと考えるほうが自然だ。もの静かであるという意味の「おとなしい」の使い方は江戸初期には現れ、「ややこしい」が登場するのは江戸末期なので、時系列からみてもおかしくはない。江戸末期の滑稽本に「男というものは誰でもみなややこしいことしてくる」という意味の記述があり、これなどは「うるさくてわずらわしい」という意味合いが強く、もの静かであるという意味の「おとなしい」の対語説が納得できる。

​(VP KAGAMI)

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