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ムキムキ
むきむき
ムキムキとは、筋肉が盛り上がっているさまを言う擬態語。ボディビルで鍛えた筋肉を表す擬態語は他に「モリモリ」くらいしか思いつかないが、マッチョな人物をほめる(あるいは、からかう)のにはいまいち弱く、いまでは「ムキムキ」が定番となっている。「ムキムキ」でマッチョを表すようになったのは最近のことらしく、一般の辞書で「むきむき」と引くと、「おのおの好みや性格によって方向を異にすること」(by『広辞苑』)、漢字で表すと「向き向き」の意味しか出てこない。そこでネットを探ってみると、ドイツ語で筋肉を意味するmucki(ムーキー、みたいな発音)が語源だとみんな言っている。日本では1970年代後半にムキムキマンというタレントがいたので、そのころにはもうこの言い方が通用していたようだ。しかしなぜマッチョをほめるのに突然ドイツ語がしゃしゃり出てくるのかがよくわからない。1970年代にはボディビルの大会が世界で開かれ、日本でも盛り上がりを見せていたが、その本場はアメリカで、ドイツが出てくる必然性はあまりない。70年代には、ドイツ系のアーノルド・シュワルツェネッガーがボディビルの大会で優勝しまくっていたので、もしかしたら関係があるのかもしれない。もっとも、筋肉ムキムキの人物を表す「マッチョ」もスペイン語が由来だから、「ドイツ語だっていいじゃん、文句言ってんじゃねーよ」という話にもなる。しかし、マッチョ(macho)のほうは、英語でも筋肉モリモリの人物をほめる(あるいは、からかう)のに使われているが、英語にムキとかムキムキという言い方はなさそうだ。
そこで、ドイツ語がどうのこうのという雑音を追い払って「ムキムキ」に向き合ってみると、みなさんの頭に思い浮かぶのは、ゆで卵のカラを剝く「剥き」であり、カラを剝いたゆで卵のつるりとした曲線美ではないだろうか。このイメージが私だけのものではないという証拠に、ゆで卵のムキムキキャラのスタンプが絶賛発売されている。ちょうど1970年代末ころ、プロレス漫画『キン肉マン』が始まっているが、その作者の名前が「ゆでたまご」。残念ながらそのペンネームの由来は、筋肉とは関係ないらしく、同時期にムキムキマンはもう活躍していたから(どの程度の活躍かは筆者はまったく知らない)、そのとおりなのだろう。しかしこの漫画の登場が、筋肉=ゆでたまご=ムキムキのイメージ定着に一役買ったことは疑いない。
しかしまあ、剝いたゆでたまごだからって「ムキムキ」という言い方は違和感が強い。ドイツ語ではトレーニングジムのことを「ムキ部屋」みたいな言い方をするようだから、「ムキ」がドイツ語発祥であることは認めてもよいのではないだろうか。しかし、ゆで卵をモチーフにした「ムキムキ」のイメージが、ボディビルダーの筋肉の美しさ(あるいは、気持ち悪さ)を表現するのにピッタリだと判断され、日本でおもしろがって使われるようになったと筆者は考えるものである(マッチョマンをからかうのに他に適当な言葉もないしね)。(VP KAGAMI)