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一服盛る

いっぷくもる

 一服盛るとは、毒薬を飲ませるという意味。「あいつに一服盛られた、もうだめだ」(御愁傷様)のように使う。最近ではそんな事件もめっきり減って「一服盛る」も使いどころがないので、慣用的に、賄賂を渡すという意味でも用いられることがある。この場合、盛る薬は毒薬ではなく、気持ちがよくなる薬ということになる。しかし、せいぜい「一服」なので、みかん箱ぎっしりの札束(古いねえ。いまならオフショアへの送金とでも……)というわけにはいかず、選挙違反程度の小細工を言うのに適している。とはいえ、こちらも「鼻薬をかがせる」などの表現に比べてあまり現実味がなく、使いどころを失っている。

「一服盛る」の「一服」は、薬の一包みという意味。昔の薬は紙に包んで渡したので、包みを数える「服」が用いられる。「盛る」は、粉薬を調合する際、紙の上で山のように盛り上げるのでそのように言うのかと思われるが、私としては、毒薬は通常他の食品に加えて(混ぜて)使うので(経験はありませんが)、厚化粧で「もってる」みたいな表現としての「盛る(加える)」と考えるのも面白いと考える。

(KAGAMI & Co.)

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