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与太者、よたもの

よたもの

 与太者(よたもの、よたもん)とは、ならず者、不良、世の中の役に立たない者、なまけ者、弱い人、おろかものといった意味の言葉で、主に東日本で使われる方言。「よた」だけでも同じ意味で用いるが、落語の「与太郎」が広まったため、「与太(よた)」は主におろか者として知られている。しかし「与太者」と言った場合は、おろかものというより、ならず者や不良の意味合いが強くなる。落語の世界でも与太郎は長屋の人々にかわいがられるが、与太者はいわば周囲に迷惑ばかりかける乱暴者「らくだ」(ご存じないかたはYouTubeなどでご確認を)だといえる。これは、名前としての与太郎がひとつの人格として身近に感じられるのに対して、物質を意味する「もの」から来た「者」が付く与太者は、外部から来るよそ者としてとらえられるせいかと思われる。

 民俗学者・柳田國男は『不幸なる芸術』で、「よた」は「よたくら」または「よたくれ」という方言から来ているとしている。愚か者を意味する「たくら、おたくら」という方言があり、この語は「へったくれ」「飲んだくれ」などの複合語を作って現代にも残っている。「たくら」「たくれ」に「よ」を付けた言葉が「よたくら」「よたくれ」で、悪者、なまけ者などを意味するという。では「よ」はなにかという話だが、やはり方言で酔っぱらいを意味する「えいたくれ」「よったくれ」は「よたくれ」に近いが、ルーツは別。というわけで「よ」はなんなのか謎なのだが、そもそも「たくら」「たくれ」また、その語の語源となった「たくらた」がなぜバカ者を意味するのかもわからないと柳田先生は言っている。

 いずれにしても「与太者」の「よた」は「よ」+「た(くら、くれ)」という語構成になっているというのが権威の見方である。筆者は以前、「与太」は無益であることという意味の「徒(いたずら)」、そこから生じた悪さ、悪ふざけを意味する「悪戯(いたずら)」と関係あるのではないかと考え、悪戯をすることを「おいたをする」というので、その「いた」に者が付いたのが「与太者」、端くれのくれなど、かたまりを意味する「くれ」が付いたのが「よたくれ」ではないかと考えて悦に入っていたが、「たくらた」という言葉が中世からあるようなので、説得力に欠けるようだ。

​(VP KAGAMI)

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