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合う

あう

 合うとは、複数のものが一つになる、調和する、重なる、意見や性格などが一致する、ある基準と一致する、などの意味。「しょう油と砂糖を合わせる」「色味が合う」「裾(すそ)を合わせる」「話が合う」「足にぴったり合う靴」などと使う。接尾語として使うと、「見つめ合う」「なぐり合う」のように互いに同じことをする、同じ手段で対抗する、「混ざり合う」「落ち合う」のように複数のものがひとつになる、一緒になるといった意味となる。

「合う」の語源について、発音するときの口の形から来ているのではないかとする面白い説がある。つまり、「あ」と大きく開いた口を「う」とすぼめるとき、唇が接近する様子が「あう」だというわけ。筆者は「輪(わ)」の語源は開いた口の形から来ているのではないかと考えるので、おかしな説だが共感できる。この珍説(共感しておいて「珍説」はどうかとも思うが)に従うと、口の形が「あ」から「う」になったとしても、唇が接触していないように、「あう」にはものとものとがくっついたり、混じりあってひとつになるという状況は想定されていない。つまり、遠くにあったものが近くになる、調和していなかったものが調和する、違っていたものが似てくるという、遠くから近くへの変化に焦点が当てられていると考えられる。例えば、料理で「しょう油と砂糖を合わせる」は、行為としてはしょう油と砂糖を混ぜる、つまり一体化させるという意味だが、この「合わせる」は「刺し身に日本酒を合わせる」などとも使うように、タレを作るのにしょう油と砂糖が必要であるというレシピ上の観念的な「出会い」(マリアージュなどと言わば言え)を言っているのであって、それらを混ぜて一体化させるか、刺し身と日本酒のように同じ食卓に出して口の中で一体化させるかというような具体的な行動は「言わなくてもわかるでしょ」の範囲だということだ。「なぐり合う」や「混ざり合う」などもフルコンタクトの行為だが、接触したり一体化したりする状況は「なぐる」「混ざる」におまかせで、「合う」は二つのものがシンクロする、出会うという意味を担うことになる。

 というわけで、冒頭の「合う」の説明だが、「複数のものが一つになる」という定義は正確ではなく、「複数のものが出会う」という定義に変えさせていただく(最初からそうしておけ、という意見は無視します)。

​(VP KAGAMI)

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