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鬱憤

うっぷん

 鬱憤(うっぷん)とは、心の中に長年積み重なった怒りやうらみ。「鬱憤を晴らす」のは、われわれにとって最大のストレス解消だが、長年積み重なった怒りやうらみを晴らすにはよほどのことをしなければならず、やりすぎは「テロ」と呼ばれる。

「鬱憤」は見るからに漢語で、中国の古典にもときどき登場する。「鬱」という漢字は、草木が激しく生い茂っているさまを表しているが、そのような精神状態を表現したのが「憂鬱」「鬱病」の「鬱」。「鬱憤」は、「憤り(いきどおり)」がジャングルの植物のように繁殖して心が晴れない状態をみごとに言い表しているが、その割にはそれほど使われていない。これは「鬱」という字を書くのがめんどくさいからだと筆者は考える。そんなばかげた理由で使われないのかとお疑いの向きもあるかと思うが、実際「鬱」という字は中国人によほど嫌われているようで、簡体字では「郁」という似ても似つかない字に置きかえられている。

「鬱憤」を書くのがめんどくさいからといって、ひらがなで「うっぷん」と書いたりしたら、おバカが色っぽい吐息をもらしているみたいでさまにならない。また「鬱憤」を簡単な和語で表現するのは難しく、無理に置きかえるなら「うらみつらみ」あたりだろうか。そのため「鬱憤」という熟語はそのままでよく使われている。とはいっても、漢語で書かれた書簡集だとか、口頭で伝えられる『平家物語』や浄瑠璃の文句などが主で、基本的には日本人も「鬱」の字を書きたくないのだと思う。

(VP KAGAMI)

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