誉めて伸ばすとは、近年教育や指導の場で盛んに言われるモットーで、指導を受ける者の長所をほめてやる気を起こすというもの。旧来の、しかりつけて欠点をなくすという指導方法に対するアンチテーゼである。つまり、最近の若い連中は厳しく指導すると萎縮したり反発したりして成長がとまるが、ちょっとばかしお世辞を言って持ち上げてやれば、すぐに調子に乗ってやる気を起こすチョロいヤツらばっかりだと考えられているのである。しかし、残念ながらわれわれ凡人は、ほめられると慢心を生じて成長がとまるケースも多いのであって、スポーツなどの勝負事の世界では、慢心がすぐに敗戦という結果につながるので反省も生まれるが、芸術や技芸など評価が明確でない世界では、ほめられると慢心して死ぬまで成長しないヤツばかりである。そこから日本では、政敵を攻撃する際、ほめて慢心をさそい堕落させるという「誉め殺し」すなわち「誉めてつぶす」という高等戦術も編み出されている。（KAGAMI & Co.）