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高飛び

たかとび

 高飛びとは、高く飛ぶことを言うが、悪いやつらの業界では、遠くへ逃げること、特に海外へ逃げることを言う。日本では高飛びには、東南アジア諸国が推奨されているようだが(ウソです)、高飛びされる国はいい迷惑である。

「高飛び」は、空に向かって上昇すること、または空の上の方を移動することをいう。日本では、海外への逃走には主に飛行機を使うので(船でもいいが、「そんな悠長にかまえている場合じゃないよ」という状況である)、「高飛び」は言い得て妙だが、語源を調べると、どうやら飛行機で逃げるから「高飛び」になったわけではなさそうだ。というのも、江戸時代の歌舞伎のセリフには、罪を犯して遠くに逃げるという意味で「高飛び」という言葉がよく出てくる。ライト兄弟が有人動力飛行に成功したのが1903(明治36)年のことだから、もちろん飛行機を使ったわけではないし、空高く飛べたわけもない。

「高飛び」は「高飛ぶ」という動詞で、上代日本ですでに使われていた。『万葉集』には「空をゆく雲になりたい、空高く飛ぶ鳥になりたい。そうして明日にでも妻のもとに戻って愛の言葉を交わし、互いの無事を確かめたい」という昭和のフォークソングみたいな歌が残っている。「空高く飛ぶ鳥になりたい」は「高飛ぶ鳥にもがも」と記されいて、この時代の「高飛ぶ」は主に鳥が空高く飛ぶことをいっている。しかし、この歌で作者が言いたいのは、鳥のように空を飛んで、一刻も早く遠方の妻のもとへ行きたいということだ。その願望を鳥に託しているわけで、「速く遠くへ行きたい」という願望は、江戸時代以降の犯罪者にも共通していて、それが「高飛び」という俗語につながっているといえる。鳥のように速く遠くへ逃げたいという犯罪者の「高飛び」の夢が、現代では実現しているというわけである(逃亡先でしっかり逮捕されていますがね)。

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