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お待ち遠様、お待ちどおさま、お待ち

おまちどおさま、おまち

 お待ち遠様(お待ちどおさま)とは、相手を待たせたことを軽く謝罪する言葉で、「お待ち遠様でした、うな重の松でございます」などと使われる。「軽く」と言ったのは、この句に謝罪の言葉が含まれないからで、言葉の直接的な意味は、待ちかねている相手の気持ち「待ち遠」に「お」と「様」をつけて尊重しているだけ。つまり、ご飯が出されるのをじっと我慢している犬に「えらいえらい、よくおとなしく待ってたねえ」と言っているようなものである(ちょっと違うか…)。なんなら、冒頭で挙げた文例のうなぎ屋には「本物のうなぎ食いたけりゃ、30分くらい待つのがあたりまえだろ」くらいの態度が見てとれる(これも、ちょっと違うか…)。

「お待ち遠様」をややくだけた言い方にしたのが「お待たせしました」で、これになるともう、「あなたを待たせました」と言っているだけで、謝罪の気持ちはほとんど含まれない。牛丼屋などでは、注文してから3分くらいで料理が出されても「お待たせしました」と言われることがあるが、これなどはほとんど決まり文句みたいなもので、客の側も「いえ、待ってませんけど」などと言い返しはしない。これが10分も待たされると、店側は「たいへんお待たせして申しわけありません」と本格的に謝罪し(うなぎ屋とはえらい違いだ)、気の効いた店ではおかず一品サービスしてくれたりする(牛丼屋ではまあ、ないかな)。

 なお、威勢のよい寿司屋や親しい店では「お待ちっ」と省略形ですませる場合があるが、うなぎ屋で30分待った後にそんなに元気よく言われてもなんだかなあと思うし、マニュアル重視のレストランチェーンで店員が「お待ちっ」などと言うと、客はびっくりする。

 (KAGAMI & Co.)

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