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しとやか
しとやか
しとやかとは、静かで落ち着いているさまや性格を言う形容動詞。昔は女子をほめる言葉として、「おしとやかなお嬢様ですこと」のように丁寧語を付けて使われたが、いまは「おしとやか」も「お嬢様」も見つけるのが困難になってきたし、それがほめ言葉になるのかどうかも微妙なので、耳にする頻度がやや低下している。また近年、髪や肌などものの表面に潤いがあることを「しとやかお肌」などと言い表すが、古語辞典も含めて辞書には「しとやか」に「潤いがある」という説明は載っていない。しかし後で説明するように、「しとやか」を「湿っている」「潤いがある」という意味で使っても問題はなさそうであり、「おしとやかなお嬢様」を探すのが困難になったこの時代、こちらの使い方も増えていくことが予想される。
「しとやか」は、物静かであるという意味の「しと」に、いかにもそのような状態であるという意味を加える接尾語「やか」を加えた語。「しと」はそれだけだと、紫式部の昔から「小便」を意味するが、「おしとやかなお嬢様」は「小便臭い小娘」になってしまうので、「しとやか」の「しと」が小便でないことはわかる(当たり前だろ)。「しと」を重ねて「しとしと」のように擬音語、擬態語とすると、もの静かなさま、ぴったりと着くさま、小雨の降る音などの表現となる。この場合、意味があるのは「し」であり、「と」はもとは「さっと」「ふと」のように動作・状態を表す格助詞で、それが「し」と結合して一語になったものと考えられる。その問題の「し」は、「沈む」「静か」「湿る」「染み(シミ)」の「し」と関係ありそうで、いずれも水底に沈殿して動かないというイメージで表される語である。つまり、水底に沈んでいるように静か(そりゃあ、静かだろうよ)なのが「しとやか」ということになる。小便の「しと」は、小便をはじく音から来ていると考えられるので、「おしとやかなお嬢様」が「小便臭い小娘」ではないことを確認でき、おしとやかなお嬢様もほっとするのである。
(KAGAMI & Co.)