情けない

なさけない

　情けないとは、期待通りにいかず落胆している気持ちを表した言葉。「医学部に合格できないとは、わが子ながら情けない」と、たぶん医者である親が言うと、おバカな息子は親に輪をかけて情けない気持ちになる。がっかりだ、残念だ、という気持ちに近いが、それらより相手に対する訴えかけが弱く、自分を責めている印象がある。これを改善して相手への攻撃性を高めようとするなら、「医学部に合格できないとは、おまえは情けないやつだ」とその気持ちを相手にぶつければよい（余計なお世話だが）。

「情け」は、他者への憐れみの心を主とした人間のライトサイドの精神性、また、風情や情緒を理解する洗練された精神性をいい、それを否定した「情けない」も、情愛や思いやりの心がない、風情や情緒がなく興ざめするという意味で本来使われていた。後者は現代に置きかえると、前評判に惹かれて来た観光地に「これかあ」とがっかりさせられる気分に近く、それが現在の使われ方につながっていると思われる。

​（VP KAGAMI）