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ばっちい

ばっちい

 ばっちいとは、「きたない」の幼児語。「ゴキブリはばっちいから食べないでね」などと使う(使わないか…)。もとは「ばばっちい」で、大便を意味する方言「ばば」から来た言葉(そりゃ、きたいなわな)。

「ちい」という接尾語は「ぼろっちい」「ちゃっちい」「まるまっちい」などと使われているが、「ちい」という単独項目としては主な辞書には載っていない。「おいしい」や「うれしい」を幼児が発音すると「おいちい」や「うれちい」と変化するので、「ばばっちい」も「ばばしい」という言葉があったのかと考え調べてみると、『日葡辞書』に「ばばしい人」として「落ち着きのなさが外に現れ、言葉づかいや動作のだらしない人」とある。どうやらうんことは関係ない言葉のようだ。そこで、「早い、安い、うまい」のように、語幹に「い」の付いた形容詞と考えて「ばばい」で辞書を調べると、「きたない」の意味の幼児語で江戸時代後期から使われていた言葉のようで、「ばばっちい」は「ばばい」がもとになっているとみられる。これは「ボロい」と「ボロっちい」の関係に似ている。

 ところで「ばっちい」や「ばばっちい」は少し前は「ばばっち」と言われていたようで、『大言海』でも「ばっち」「ばばっち」として載っている。この「っち」という接尾語は、お笑い芸人の「ねづっち」のように名前の後に付けてニックネーム化する働きや、「おれっち」「おまえっち」のように「おれ達」「おまえ達」のように「達(たち)」の略として用いられている。名前をニックネーム化する働きとしては、「っぽ」という語があり、田舎から出てきた人をその出身地で「土佐っぽ」とか「薩摩っぽ」などと呼んでいたという。この「っぽ」は「「方(ほう)」が変化したものと考えられ、「土佐の方の人」「薩摩の方の人」が略されたのが「土佐っぽ」「薩摩っぽ」だといえる。方向や方位を表す「方」は、「かた」と読むと、「こちらのかた」「あのかた」のように人を敬って指し示す語となるように、指し示す方向にいる人そのものを言い表す。そう考えると「こちらの方」の「こちら」も「こっち」、「あちら」も「あっち」と言うように、「ねづっち」の「ち」も指し示す方向の意味合いが含まれているのかもしれない。

 いずれにしても、人の名前や出身地に「ぽ」や「ち」を付けてニックネーム化するという働きは注目すべきで、そうすることで、幼児に接するように相手をかわいがったり、からかったりするニュアンスを加えている。

 この「っぽ」や「っち」が変化して、語幹を形容詞化する語が「っぽい」や「っちい」であり、「安っぽい」、「バカっぽい」、「うそっぽい」または「安っちい」「弱っちい」「ぼろっちい」のように、指し示すものを下にみてからかうニュアンスを加えているのではないかと考える。(VP KAGAMI)

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