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販ぐ、鬻ぐ、ひさぐ

ひさぐ

 ひさぐ(販ぐ、鬻ぐ)とは、販売するという意味。古い言葉で今では通じないが、昭和の頃まで売春することを「春をひさぐ」などとしゃれた文句で言い表していた。語源は「引っ提げる(引き下げる)」つまり、行商人が商品を天秤棒などに下げて売っているというところから来ていると『大言海』などは述べている。「引っ提げる」は「ひさぐ」とも言う場合があるようなので納得できないでもないが、「販ぐ(ひさぐ)」は近世初期まで「ひさく」と濁らず、また「販ぐ」は四段活用、「引っ提げる」は下一段または下二段活用なので、疑問が残る。似たような言葉なら「引き裂く」のほうが語の種類としては近いが、意味は離れる。「ひさぐ」の使い方が、先の「春をひさぐ」も同様、「肉を売って生計をたてた」とか「棺を売る者」とか「奴隷を売り買いする商売」など、下賤な人々のものの販売を蔑視したような使い方が多いのは着目点かと思われる。江戸時代、女性を蔑視した言い方に「引っ裂かれ」というのがあったようで、女の行商人のことをいう「販き女(ひさぎめ、ひさきめ)」から来ているのか、男との縁を引き裂かれたからか、あるいは卑猥な意味があるのかもしれないが、ここで「引き裂く」が再登場する。そこから筆者は、「ひさぐ」の使い方は「春をひさぐ」がもともと正統(?)な使い方であって、そこから通常の販売、それも下賤な人々のものの売り買いに充てられたのではないかと考える。(っても、いまはほとんど使われていない言葉なので、どうでもいいっちゃいいんだけど)。(VP KAGAMI)

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