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ネガティブ

ねがてぃぶ

 ネガティブとは、否定的であるさま、消極的であるさま、悲観的であるさま、マイナスの状態、などを表す形容詞。英語negativeをカタカナで表した外来語だが、「ネガティブな回答」「ネガティブな性格」「ネガティブな予想」など、多くの使用例から、悪い、暗い、悲しいなど、それこそ「ネガティブ」な印象がある。しかし、例えば「感染症の検査結果はネガティブでした」のように、単純に「陰性」という意味でも使われ、この使用例などはむしろ「うれしいお知らせ」である。

「ネガティブ」は、誰もが意味をよく理解しているつもりになっているが、その実、意味のひろがりや聞き手に与える印象が多岐にわたり、取り扱い注意の言葉でもある。例えば、「インフレという言葉にはネガティブな印象がある」と筆者がなにげなく書いた場合、ある人は単純に「市場にとってマイナスである」という意味に、またある人は「この先経済はお先真っ暗ですね」という悲観的な意味に、人によっては、評論家が「このままでは日本はダメになる」と相手を否定する攻撃材料となるととらえるかもしれない。

 その事情はもとの英語からして同様で、例えば、“negative thinking(ネガティブ・シンキング)”は、悲観的、消極的思考を、“negative campaign(ネガティブ・キャンペーン)”は、選挙などでライバル候補を徹底的に誹謗中傷する(つまり、相手を否定する攻撃的な)手法を、“negative emission(ネガティブ・エミッション)”は、大気中の温室効果ガスの濃度を減少させることができる技術を、それぞれ意味するが、negative thinkingの意味をnegative campaignに当てはめると、候補者や応援者がみんな暗い顔をして「もうだめだ~、落選間違いなし」みたいなやる気のないキャンペーンを連想させるし、negative campaignの意味をnegative emissionに当てはめると(ちなみにemissionは「放出」の意味)、地球に有害な(つまり、否定的な)毒物をまき散らす技術のようにも受け取られる。と、このように「ネガティブ」は言葉で遊ぶのには適しているが、使用にあたっては、相手に与える印象がまちまちであることを注意する必要がある。

​(VP KAGAMI)

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