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体を張る

​からだをはる

 体を張るとは、捨て身で行動するという意味。スルメイカの身の上を案じた言葉ではない(当たり前だろ)。「この城は体を張って守り抜け」と殿様が命令する場合、早い話、自分の体を守ろうとせずに殿様を守れということ。つまり「命をかける」と意味が近いが、「この仕事に体張ってます」と言う場合、この人はせいぜい「クビを覚悟で」あたりを想定しているので、「命をかける」ほどの局面で発せられる言葉ではない(もっとも、「この仕事に命かけてます」などと言っているヤツも、せいぜい「減給覚悟で」あたりを想定している可能性もあるので、上司や取引先の担当者は要注意である)。

「張る」は「幕を張る」「氷が張る」のように、布などをめいっぱい広げる、ものの表面を覆い尽くすといった意味で使われ、「胸を張る」「意地を張る」「気が張る」などはそのイメージを見立てた言葉といえる。「体を張る」の場合も、体を前面で大きく広げてといったイメージがあるかもしれないが、一方で、「有り金全部『丁』に張った」「ヤマを張る」という賭博で金を賭ける、投資するという意味の影響もあるかもしれない。この場合、「体を張る」には「でかいリターンを期待して」というニュアンスがこもることになり、多少魅力的な使い方となる。

 なお、「体を張る」を「体が張る」と言ってしまうと、筋肉が固くなる、凝るという意味で、突然ショボい言葉となり、「この仕事に体が張ってます」などと言うと「お疲れね」というねぎらいの言葉が返ってくるだけである。

(VP KAGAMI)

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