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容疑者

ようぎしゃ

 容疑者とは、犯罪の疑いをかけられた者。「容疑者を乗せた警察車両は国道246号を北に向かって逃走中」(なんだか意味わからない状況だ)などと使われる。犯罪の疑いを表す言葉に他に「嫌疑」があるが、こちらは確たる証拠に基づく疑いを意味し、「容疑」の方はその証拠が弱い疑い。つまり、「職質しようとしたら逃げ出したんだから、あいつが犯人に決まってる」と息巻いている刑事の、「あいつ」に対する気持ち。

 というわけで、「容疑」も「容疑者」も法律の文章ではあまり使われにくい言葉となっている。しかし、テレビ番組『警察24時』ではバンバン出てくるので、現場の担当者にとっては、「証拠が固まってから……なんて悠長なこと言ってたら、犯人はみんな逃げちゃうんだよ」という気分なのかもしれず、「嫌疑」より「現場感」の強い言葉と言えそうだ(「事件は会議室で起きてるんじゃない!」みたいな?)。

 ところで「容疑者」の「容」は、「容認」「寛容」のように相手を受け入れるという意味でよく使われる。すると「容疑者」は、自分が罪を犯したことを認めている素直なヤツと解釈できそうだが、そんなわけはない(罪の自覚はあっても、それを認めるかどうかは別物)。「容」は、「容貌」「容姿」のように姿かたちという意味で、「内容」「容器」のように入れるという意味で使われるが、「容疑者」の「容」は、ある出来事について私の意見や要望を「さし入れる」、つまり「口を挟む」という意味を持った使い方なのだそうだ。漢字の「容」は、家を意味する「宀」と「谷」からなるが、この「谷」は渓谷の「谷」とは別系統の文字らしく、「口」は呪術に使う容器、その上の「父」のような形は、容器から現れた心気を表しているという。早い話、「口」はアラジンの魔法のランプで、その上に魔神が現れた様子を表しているのが「谷」なのである(あらっぽい例えをご容赦ください)。家(神廟)で祈祷していたら魔神が現れちゃったみたいなのが、姿かたちを意味する「容」。すると「入れる」の意味がわからないが、魔神がランプに戻るところを表しているとでも考えておけばよいのではないだろうか(さらにあらっぽい説ですが、ご容赦ください)。

 (KAGAMI & Co.)

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