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滑舌

かつぜつ

 滑舌とは、言葉の発音や発声の明晰さ、滑らかさをいう。言葉が明晰で滑らかであれば「滑舌がよい」、その逆で言葉が聞き取りにくかったり、たどたどしい場合は「滑舌が悪い」と言う。しかし、一般の会話で聞き取りにくい話し方を「滑舌が悪い」とはあまり言わず、主にテレビなどで見るアナウンサーや俳優のそれについて評価される。それもそのはず、「滑舌」はもとは業界用語で、アナウンサーや俳優の早口言葉などによる発声練習を言ったものらしい。つまり内輪の話で使われていた言葉がいつしか、司会やドラマの実演で言い間違いがひどかったり、たどたどしいしゃべり方だったりする人物について「滑舌が悪い」と評価されるようになり、いまでは、テレビの視聴者が「あの滑舌が悪いアナウンサー、やめさせろ」などと、偉そうな口を叩くまでにいたっているというわけだ。

 中国には口先ばかりの多弁さを表す「油嘴滑舌」という四字熟語があるが、日本には伝わっていないか、伝わってもほとんど使われなかったようで、『大言海』などの主要辞典にも掲載されていない(だから、読み方もよくわからない。「ゆしかつぜつ」か「ゆうしかつぜつ」か?)。油にくちばし(嘴)と書く「油嘴」は、油を差したようになめらかなしゃべり方を言うのだと思うが、中国語ではこの言葉だけで使用されることもあるようだ。ただ「滑舌」のほうは単独で使用されることはほとんどなさそうで、それがなぜひょっこりと日本の放送業界の専門用語として現れたのかはよくわからない。

(VP KAGAMI)

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