にてもやいてもくえない

　煮ても焼いても食えないとは、どう調理しても食えないということから、扱いにくい相手、手に負えない人物を例えた言葉で、「煮ても焼いても食えないとは、あいつのことだ」などと使う。魚などは見た目ではうまいかまずいかなかなか判断できないので、この言葉も、見るからに近寄りたくない人物ではなく、見た目は普通で人当たりもよさそうだが、いざつきあってみると性格の悪さが際立ってくるというような人物について言われることが多い。

　海産物が豊富な日本では、どんな魚でも食おうと思えば食えない魚はないが（猛毒のフグさえ食べてしまうくらいだから）、釣り人に聞くと、まずすぎて食えなかった魚はいくらでもあるようで、そういう魚こそが「煮ても焼いても食えないヤツ」ということになる。この辞典は『釣り辞典』ではないので、具体的な魚の名前は各自ネットなどで調べてほしいが、そんなことを調べてなんの役に立つのかとも思う（それを言うなら、当辞典の存続意義も疑われてしまうが）。ところで、そういう煮ても焼いても食えない魚は補食されにくいと考えられ、繁殖していてもよさそうだが、ネットで見てもそんな名前の魚が増えている様子はない。そこからわかるのは、魚は総じてグルメではないということだ。

​（VP KAGAMI）

• 煮て食おうと焼いて食おうと