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いらか

 甍(いらか)とは、屋根のいちばん高いところ。建築用語では棟(むね)。またはそこに置かれる瓦すなわち棟瓦のこと。あるいは瓦屋根、屋根瓦のこともいう。しかし、現代のわれわれにとっては、子どものころに覚える文部省唱歌『こいのぼり(別名いらかのなみ)』の冒頭「いらかの波と雲の波」でしか知らない(その歌詞でさえもちゃんと意味がわかっているかどうかわからない)古い言葉となっている。『こいのぼり』の歌詞は、屋根の連なりと空の雲とを波にたとえてシンクロさせ、その間をこいのぼりが泳いでいるという、いま読み返してみると、作詞者のドヤ顔が思い浮かぶなるほどという詞となっている。

「いらか」は屋根の棟を表すほか、屋根そのものも意味していたが、そこから瓦屋根を魚のウロコに見立て、その古称「いろこ」から来ているのではないかとされているが、「いらか」が必ずしも瓦屋根ばかりを言っていないことから、草葺き屋根の材料で「いら(刺)」つまり刺(とげ)のある植物から来ているのではないかという説もある。しかし、草葺き屋根の材料に棘のある植物が使われるという例はなく(屋根葺き作業で血だらけになってしまうだろ)、微妙な説だといえる。もっとも、鯛などの魚のウロコを「いらいらと立っている」と言い表している例もあり、ウロコももとは「いら(刺)」から来ていると考えれば、どの説も丸く収まるというものである。(VP KAGAMI)

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