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虎の子

とらのこ

 虎の子とは、大切にしているもの、手放せないものをいう。虎が子どもを非常にかわいがるところから来ているようで、そこからすると、溺愛しているわが子とか親の片身の指輪などの例えに用いられそうだが、実際は、食事代と帰りの電車賃として、パンツに縫い込んでおいた千円まで競輪につぎこんでしまったおっさんが「虎の子の千円まですっちまった」などという情けない使われ方をしている場合が多い。

 大事なものという意味で「虎の子」という語が使われはじめたのは江戸時代からのようだが、主に貧乏人がわずかに持っているまとまったお金のことを指す場合が多いようで、競輪で千円すってしまったおっさんのこの使い方は正しいといわなければならない。しかし、食費や電車賃まですってしまって今夜は歩いて帰るか野宿しなければならないというおっさんのみじめさを強調するなら「なけなしの千円まですっちまった」とするのがよい。(VP KAGAMI)

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