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虚無僧

こむそう

 虚無僧とは、普化宗(ふけしゅう)の修行僧。僧侶でありながら剃髪せず、刀を持ち、独特の深編み笠をかぶって、尺八を吹きながら諸国を廻るという、出家しているのかしていないのかわからない中途半端なスタイルによりよく知られ、悪事を働いたかなにかでしかたなく出家しているような武士の間でカルト的な人気があったらしく、時代劇や漫画などでは、忍者や逃亡者の変装ファッション(ただし、すぐ見破られる)として、山伏、薬売りや針売りの行商人などと並んで高い人気を誇っている。

 漢字は「虚無(きょむ)」の「僧」と書くので、「ニヒルな僧侶」という意味が伝わってきて、円月殺法で知られる(いまではそれほど知られてもいなさそうだが)眠狂四郎(ねむりきょうしろう)かと勘違いされそうだが(眠狂四郎は確かに虚無僧姿が似合う)、これは当て字で、もとの意味は「こもそう(薦僧)」すなわち「乞食ファッションの僧侶」。そこから「ぼろぼろ」「ぼろんじ」(いずれも破れた汚い衣装を着ている路上生活者のイメージ)など身も蓋もない呼ばれ方をされることもある。

 しばらく前、海外の日本旅行パンフレットでは、尺八をくわえた深編み笠の虚無僧が駅のホームにずらりと並んで新幹線を待っているといった悪夢のような光景が紹介されていたが、日本の実情がよく理解されるようになった昨今ではそんなシュールでおもしろい日本案内もなくなろうとしている。

​(VP KAGAMI)

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