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進退窮まる

しんたいきわまる

 進退窮まる(進退きわまる)とは、進むことも退くこともできない困難な状態に陥るという意味。「新証拠が次々と示され、あの人も進退きわまった」のように普通に使っているが、「進退窮まる(進退きわまる)」という見出しではほとんどの辞書に載っていない。この句の本来の形は「進退維(これ、または、ここに)谷(きわ)まる」というもので、辞書にもこの形で載っている・「進退維谷まる」と漢字で書かれたら、おそらく誰も読めない(「たにまる」ってか?)ので、みんな「進退きわまる」としれっと略して使っているに違いないが、お固い辞書としては本来の使い方を重視しているというところだろう。

「進退維谷まる」は『詩経』大雅の「桑柔」という詩中に見られる。「桑柔」は、伝説によれば、古代中国・周の医師が、おバカな国王とそれにへつらう役人を非難する詩で、告げ口が横行する役人どものおかげで作者は「進退維谷」と嘆いている(そんな危ない詩を書いているから「進退維谷」になってるんだよ、きっと)。

 進むことも退くこともできないという意味の言葉に「立ち往生」「背水の陣」などがある。「立ち往生」の「往生」は死ぬことを意味しているので、「進退窮まる」より窮まり方がひどい。「背水の陣」は後ろに下がることができないので、あとはやけくそで戦うしかないという姿勢を見せた言葉で、進むことも退くこともできずどうしていいかわからない「進退窮まる」よりはやる気のある言い方だといえる。(VP KAGAMI)

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