関連用語
野方図
のほうず
野放図、野方図とは、勝手気まま、傍若無人にふるまうこと、際限や秩序がないこと、そのようなさまをいう。「野放図な言動」は、タレントが一発でレギュラー番組を降ろされる言動、「野放図な生活」は、ムダに金をつかいまくっている生活とも、金がなくてぐうたらしている生活とも受け取れる。
野放図、野方図は、江戸後期に現れた言葉で、「方図(ほうず)」に、粗野であるという意味の語素「野(の)」を加えたものと考えられる。「方図」は限り、際限という意味で江戸最初期の『日葡辞書』に載り、際限がない、とんでもないという意味で「方図もない」という句も江戸初期にはあらわれている。とはいえ、「方図」という熟語は中国にもなく、現在も単独では使われていない謎の言葉である。「方図もない」は際限がない、とんでもないという意味だが、似た意味で「途方もない」という語があり、これは「途方図もない」という言い方もされた。さらに、途方もない、常識では考えられないという意味で「図がない」という言い方も存在し、「図」だけでも際限、限りという意味があったようだ。しかし、「図がない」より「方図」のほうが出現が古いので、「図がない」の「図」は「方図」が略されただけとも考えられる。「途方もない」「途方にくれる」の「途方」は、方向、手段、道理などの意味だが、「図」という字は「と」とも読み、「途方」を「図方」と書いている文章も江戸初期にはあることから、「図方」がひっくりかえった語といえなくもない。私見だが、「野方図」の「ほうず」は、ストレスを発散させるという意味の「放ず(ほうず)」と関係あるのではないかと思う。「放ず」はサ行の活用であり、「方図」は古くは「「はうづ」と表記され「図」はタ行の語なので、源流は無関係だが、江戸後期に現れた「野方図」は、「放ず」と「方図」がシンクロして生まれた語のような気がする。
(VP KAGAMI)