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馬の耳に念仏

うまのみみにねんぶつ

 馬の耳に念仏とは、価値のわからない者に貴重な物品を渡したり重要な教えを聞かせたりするのはムダであるということわざ。馬の耳に向かって念仏(仏教の祈りの言葉)をとなえるという意味なので、見方をかえれば、「そんな価値のわからない連中に対しても仏の教えを伝えなければならない僧侶はつらいよ」と、または「どうせ価値がわからないのだから、いかにも布教に専念していますよという姿勢を示すために適当にやっつけておけ」と解釈することもできる(できないと思う)。

 類似のことわざに「猫に小判」「豚に真珠」などがあるが、小判や真珠はたいていの人間なら価値がわかるから、「馬の耳に念仏」のほうがややハードルが高く、なかなか守れない注意事項を説明したり、難しい学説を教え聞かせたりする場合に用いられる。

 ところで、小泉八雲が『怪談』でとりあげた「耳なし芳一の話」は、耳に念仏を書き忘れて、怨霊に耳を引きちぎられた僧侶の怪談話だが、そこで「耳なし芳一の耳に念仏(を書く)」という新しいことわざを提案したい。これは耳をちぎられる以前なら、「画竜点睛」のように「ものごとは最後のツメが肝心だ」という教訓に(話としてはおもしろくなくないが)、ちぎられてしまった後なら「後悔先に立たず」のように「いまさらもう遅い」という意味になる(どうやってちぎられた耳を回収したのかわからないが)。

​(VP KAGAMI)

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