鼻毛を伸ばすとは、態度に締まりがなくなるという意味。特に、男が女にうつつをぬかしてでれでれしている様子を言うのに用いる……といっても、鼻毛が伸びるのと男女関係との関連性がいまいちピンとこないせいか、近年あまり聞かれなくなった例えである。「鼻毛を長くする」ともいう。

「鼻毛」は鼻孔の中に生える毛で、口ひげやあごひげのように、伸ばしていてもスタイリッシュと評価されることは決してなく（そりゃそうだ）、日常のケアが行き届いていないだらしない人物、あるいは人の目を気にしない（というか、人がどう思っているかわからない）おろかな人物と受け取られる。戦闘が続いて鼻毛の手入れどころではない時代が終わり、江戸時代に入って身なりにもうるさくなると、「鼻毛を伸ばす」「鼻毛を抜く」「鼻毛を読む」等々、鼻毛に関する言葉がそれこそ鼻毛のようにわんさか出てくる。このころには「鼻毛」だけで、女にうつつを抜かすこと、また、おろか者という意味で使用されている。

　ジェンダー平等が叫ばれている昨今、「鼻毛を伸ばす」を、ホストに入れ込んでいる女性にあてはめてもよさそうな気もするが、やはり「鼻毛」は男性にお似合いなアイテムのようで、そういう使用例は見られない。

​（VP KAGAMI）